銭湯にて

銭湯で湯船に浸かっていると、
二人の男が愚痴をこぼしていた。

どうやら、
介護職について話しているらしい。

「土日休みがないから
　この仕事は人が増えなくてダメなんだよ」

一人が得意そうに語る。
こういう人が多いのが、
現状なのかもしれない。



一つの物事に対して、
視点を変えてとらえていける。

例えば、

「だからこそ、空いている時間に
　銭湯に入ることが出来る」

そういう発想の人が
増えることに期待したいし、
そういう発想の人たちと
一緒に仕事をしたい。

そんなことを思う。



ちなみに、

人が増えない理由は、
もっと違うことのような気がする。

不本意

彼はその道のスペシャリストである。

室内における危機管理能力。
特に逃げ足という点において、
彼の右に出る者は、
そういないに違いない。

そのため、
オレは秘密兵器を用意していた。
長丁場になる今後の生活において、
今後、避けては通れないだろう決戦の日。

いつまでも、新聞紙を丸めて・・・
というわけにもいかない。



厚さ１cmほどのプラスティック製の
ラケットには網が張られている。
電池式ではあるが、
ボタンを押せば、
電流が流れる仕組みになっている。

元は蚊などを退治するための
ものだった気もするが、
相手にショックを与えるには十分だろう。

目には目を。
スペシャルにはスペシャルを。
準備に抜かりはない。

そして、

引越しをして２年。
ついに、その時がやってくる。



目の前を歩く３cmほどのこげ茶の物体。

見慣れた面構えと、
悠然とした動作。
初対面でありながらも、
何故か風格すら漂っている。

オレは視界から逃さぬよう、
さらに、音を立てないよう、
極力注意しながら、
手元にあったラケットに手を伸ばす。
宿敵に対して、
笑みすら浮かべているのが自分でも分かる。

そして、

ゆっくりと試運転を重ねるに連れ、
その顔面から、
見事に笑みが消えていくのも・・・よく分かった。



動かない。



恐る恐る蓋を開ける。
なんという初歩的ミス。
入っているべき電池がないことに、
自然と口元が引きつる。

彼はどうしているだろうか。

視界の中では、
まるで、そのことがわかっていたかのように、
時折、立ち止まりながら、
戦場を後にしようとしている姿が見えた。

既に電池を取りに行く時間はない。



もう仕方ない。

数秒後、
オレはラケットを垂直に持ち直し、
その側面で仕留めにかかる。

やってることは新聞紙と同じ。
せっかく用意した
スペシャルな電流の出番など一切ない。
思わず溜息がもれる。



瀕死の彼を紙に包みゴミ袋へ。

戦いは終わった。
モヤモヤとした不本意さだけが、
その場に充満している。

ラケットの側面・・・
おそらく、彼も同じ気持ちだったに違いない。

遅ればせながら

今年は
やらないつもりだったが…



父の日さん。

父
ノ
ヒ



母の日さん。

ハ
ハ
ノ
ヒ



さて、
今年は何を買おうか。

絶対に負けられない戦い

絶対に負けられない戦いが、
そこにあるという。



近くにあるテレビから、
そんな言葉を聞いたことがある。

そして、



絶対に開けられない箱が、
そこにあったという。



近くにある冷蔵庫から、
そんな状態のタッパーが
発見されたという。

半透明越しに見える
白い毛玉のような物体。

そう、



絶対に食べられないカビが、
そこにあったという。



オウンゴールを
決めた気分である。

ようき

陽気。

妖気。

楊貴。



様々な『ようき』の中、

容器。



時折、思わずやってしまう。

容器買い。



某、炭酸飲料の
ワールドカップを意識した、
丸型フラスコのような容器。

何かに使えるのではないか。
いつか使うのではないか。

それこそ、
４年に１度くらいの頻度で、
購入した容器と、
オレの中の閃きが一致する。

容器買い。

今回はどうだろう。



とりあえず、



近隣のペットボトル回収日は、
水曜日となっている。