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やる気はそれほど・・・
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彼はその道のスペシャリストである。

室内における危機管理能力。
特に逃げ足という点において、
彼の右に出る者は、
そういないに違いない。

そのため、
オレは秘密兵器を用意していた。
長丁場になる今後の生活において、
今後、避けては通れないだろう決戦の日。

いつまでも、新聞紙を丸めて・・・
というわけにもいかない。



厚さ1cmほどのプラスティック製の
ラケットには網が張られている。
電池式ではあるが、
ボタンを押せば、
電流が流れる仕組みになっている。

元は蚊などを退治するための
ものだった気もするが、
相手にショックを与えるには十分だろう。

目には目を。
スペシャルにはスペシャルを。
準備に抜かりはない。

そして、

引越しをして2年。
ついに、その時がやってくる。



目の前を歩く3cmほどのこげ茶の物体。

見慣れた面構えと、
悠然とした動作。
初対面でありながらも、
何故か風格すら漂っている。

オレは視界から逃さぬよう、
さらに、音を立てないよう、
極力注意しながら、
手元にあったラケットに手を伸ばす。
宿敵に対して、
笑みすら浮かべているのが自分でも分かる。

そして、

ゆっくりと試運転を重ねるに連れ、
その顔面から、
見事に笑みが消えていくのも・・・よく分かった。



動かない。



恐る恐る蓋を開ける。
なんという初歩的ミス。
入っているべき電池がないことに、
自然と口元が引きつる。

彼はどうしているだろうか。

視界の中では、
まるで、そのことがわかっていたかのように、
時折、立ち止まりながら、
戦場を後にしようとしている姿が見えた。

既に電池を取りに行く時間はない。



もう仕方ない。

数秒後、
オレはラケットを垂直に持ち直し、
その側面で仕留めにかかる。

やってることは新聞紙と同じ。
せっかく用意した
スペシャルな電流の出番など一切ない。
思わず溜息がもれる。



瀕死の彼を紙に包みゴミ袋へ。

戦いは終わった。
モヤモヤとした不本意さだけが、
その場に充満している。

ラケットの側面・・・
おそらく、彼も同じ気持ちだったに違いない。
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