やる気はそれほど・・・
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振り向くと男が座っていた。
細身で中年、
どこにでもいそうな風貌をしている。
オレは一つ大きく呼吸をすると、
胸まで浸かったお湯を、
首の辺りまで来るように深く潜り込んだ。
露天風呂には様々な人が出入りをしていて、
案外、一人で入っているよりも
落ち着いたりすることもある。
暗闇の中にぽっかり浮かぶ灯りが、
街中にいることを忘れさせてくれたりもする。
夜になっても銭湯はとても賑やかで、
日常の疲れを癒してくれる救世主の役割を
存分に果たしてくれていた。
お湯の匂いと木の匂い。
とても気分良く、オレはこの空間を楽しんでいた。
中年の男が立ち上がる。
おそらく、他にもある湯船にでも浸かりに行くのだろう。
この銭湯には数種類の湯船が存在し、
それを巡るだけでも楽しみを覚えてしまう。
ぷぅ・・・
聞きなれた軽い音が聞こえる。
動物的本能が、すぐに鼻の弁を塞いでいる。
標的は確認するまでもなかった。
音の鳴る方にいるのは、立ち上がった中年の男だけだ。
男の背丈は低く、
ちょうど、波を這うように臭いの集合体が拡散する体制を布いている。
オレの位置取りは風下。
どう見積もっても危機的状況にある。
ただ、音が聞こえたからといって、
すぐに慌てて移動するのも気が引けた。
オレは考える。
時間がないことは百も承知だが、
冷静且つ迅速に答えを導かせ・・・
その迷いがいけなかった。
男はオレの前を横切ると・・・
ぷぅ・・・
再び、あの忌々しい軽快な音を放出させた。
ぷぅ・・ぷぅ・・・
しかも、一歩進む度に音を増量させていく。
男が湯船からあがった時には、
オレは完全に包囲された。
右斜め後方で感じる気配が憎い。
身動きは取れない。
まさに、絶体絶命。
あの時、体がとっさに反応していれば・・・
後悔は決して先に立たない。
やられた。
その後、しばらくの間、
さほど熱くないその湯船で、
一人だけ顔を真っ赤にさせていた男がいたのは
言うまでもなかった。
ジョギングで培った少しばかりの肺活量が、
こんなところで生きてくるとは・・・
物事、何が起こるか本当に分からないものである。
細身で中年、
どこにでもいそうな風貌をしている。
オレは一つ大きく呼吸をすると、
胸まで浸かったお湯を、
首の辺りまで来るように深く潜り込んだ。
露天風呂には様々な人が出入りをしていて、
案外、一人で入っているよりも
落ち着いたりすることもある。
暗闇の中にぽっかり浮かぶ灯りが、
街中にいることを忘れさせてくれたりもする。
夜になっても銭湯はとても賑やかで、
日常の疲れを癒してくれる救世主の役割を
存分に果たしてくれていた。
お湯の匂いと木の匂い。
とても気分良く、オレはこの空間を楽しんでいた。
中年の男が立ち上がる。
おそらく、他にもある湯船にでも浸かりに行くのだろう。
この銭湯には数種類の湯船が存在し、
それを巡るだけでも楽しみを覚えてしまう。
ぷぅ・・・
聞きなれた軽い音が聞こえる。
動物的本能が、すぐに鼻の弁を塞いでいる。
標的は確認するまでもなかった。
音の鳴る方にいるのは、立ち上がった中年の男だけだ。
男の背丈は低く、
ちょうど、波を這うように臭いの集合体が拡散する体制を布いている。
オレの位置取りは風下。
どう見積もっても危機的状況にある。
ただ、音が聞こえたからといって、
すぐに慌てて移動するのも気が引けた。
オレは考える。
時間がないことは百も承知だが、
冷静且つ迅速に答えを導かせ・・・
その迷いがいけなかった。
男はオレの前を横切ると・・・
ぷぅ・・・
再び、あの忌々しい軽快な音を放出させた。
ぷぅ・・ぷぅ・・・
しかも、一歩進む度に音を増量させていく。
男が湯船からあがった時には、
オレは完全に包囲された。
右斜め後方で感じる気配が憎い。
身動きは取れない。
まさに、絶体絶命。
あの時、体がとっさに反応していれば・・・
後悔は決して先に立たない。
やられた。
その後、しばらくの間、
さほど熱くないその湯船で、
一人だけ顔を真っ赤にさせていた男がいたのは
言うまでもなかった。
ジョギングで培った少しばかりの肺活量が、
こんなところで生きてくるとは・・・
物事、何が起こるか本当に分からないものである。
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