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やる気はそれほど・・・
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映画の1シーンのようだった。

オレは顔を上げると、
物音がする方を向いた。
画面の右端から1台のバイクが現れる。
蛇行しているのは明らかだった。

左手には、駐車場から出ようとしている車がいる。
様子を窺っていたのだろう。
道路に少しだけ頭を出し、
横切るバイクをやり過ごそうとしていた。

そして、

視界からバイクは消えた。





それは、映画の1シーンではなかった。
ましてや、夢の中の物語でもなかった。

道路の右から走ってきた1台のバイクは、
体勢を崩し交差点途中で横転していた。
アスファルトとの摩擦で起こる
聞き慣れない金属音が、
辺り一帯に緊急事態を知らせている。
 
横転したまま滑るバイク。
まるで、舵取り不在のカーリングのように、
一直線にオレの目の前を横切っていく。

これから起こることは、
決して喜ばしいことではない。
それは、どんなに鈍感な者でもわかる答えだった。

その先には、車が控えている。
オレは身動き一つとることが出来ない。





ドン。という鈍い音が聞こえたのは、
当然のように、その直後だった。
一瞬にしてバイクは視界から消えていく。
車の下に潜り込んだのか、
遠くに弾き飛ばされたのか、
それはよくわからない。

ただ、数メートル先で、
非日常的なことが起こったことは把握できた。
そして、体が動かない中でも
何かに祈ることだけは出来ることも把握できた。
むしろ、それしか出来ないことを把握できた。



少しすると、
一人の若い男が歩いてくるのが見えた。
男は腕を軽く押さえながら車に近づいている。

ライダーだ。

車内からは中年の男が降りてきた。
大丈夫かと声をかけているのが聞き取れる。

どう考えても大丈夫じゃないスピードで、
どう考えても大丈夫じゃない状況。
救急車を呼ぼうと思っていた矢先に、
オレは、何とも不思議な光景を垣間見ていた。

相変わらず、自らの意思で動くライダー。
腕からは血が出ているようにも見えるが、
受け答えはハッキリとしていた。
バツの悪そうな顔を見せては、
ドライバーとの話を続ける。

オレは何かに感謝を告げると、
ゆっくりと二人に近づいて行った。
何か手伝えることはないですか。
少しでも役に立てればとの思いが
やっと、オレの体を動かしている。



動揺を隠し切れないドライバー。
淡々とした反応のライダー。
既に、数秒前の静と動は逆転していた。
オレは、ライダーと一緒にバイクを起こすと、
しばらく様子を窺うことにする。

携帯で警察と連絡をとるドライバーは、
オレの姿を認識しているだろうか。

ガソリンが洩れてますけど・・・
オレの声は届いてくれない。





改めて現場を見ると概要がわかってきた。

交差点に入ったバイクは、
一時不停止のまま駐車場前へ。
車に気付いてハンドルを切るも
バランスを崩し転倒。
滑ったまま車のタイヤ付近に接触。
本人は道路脇まで飛ばされる。
バイク、車はそれぞれ破損。
ライダーのみ怪我を負うも意識は良好。
残りは保険会社と相談の上。

と、いったところだろう。

居場所のないオレは、
気になりながらも現場を後にする。
改めて、目の前で起こった出来事を反芻し、
改めて、大きく息を吐きだす。



死者が出るような事故でなくて
本当に良かった。
オレは何度も何度も何度も何度も胸を撫で下ろした。
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