サイレントタイプ

ひとっ風呂浴びたオレは、
鏡の中の自身と対面をした。

外出先の小さな銭湯。
手頃な価格が
体と共に財布をも温める。



濡れた髪に活気を。
オレは前方に置かれた
ドライヤーへと手を伸ばす。
側面に目をやれば、
『サイレントタイプ』
の文字が躍っている。

なるほど、
こういった何気ない一行が、
売れ行きの勝敗を分けるのかもしれない。

そんなことを思いながら、
オレはスイッチに親指をかけた。

ＯＮ。





・・・轟音。





室内に響き渡るそれは、
若干故障の気配をも漂わせながら、
遠慮なく自己アピールを繰り返す。

貸し切り状態で
上がっていたテンションですら
掻き消しそうな音と、
言葉をすっかり失った使用者。

オレはドライヤーを見ながら
思わず立ち尽くす。



サイレントタイプ。

なるほど、
そういうことかと、
一人納得をし銭湯を後にする。