祭へ(前編)

夜勤を控えたオレは、
昼過ぎにむくりと体を起こした。

携帯を確認すると、
申し訳ない程度にランプが点滅している。
そういえば、バイブ音が聞こえた気もするな…
オレは、まだ眠る脳を起こすため、
ゆっくりと内容を調べ始めた。

『祭が凄い人だ』

…その文面は、
オレを覚醒へと導くには十分過ぎていた。







５分後、足は既に会場へと向かっていた。
歩いて20分、最寄駅周辺にて開催されている祭。

【つつじまつり】

地域振興にも一役買っているだろうその催しは、
確かに大層な賑わいを見せている。
所々に貼られている 完売 の文字を見ると、
もう少し早めに来てもよかったのかもしれないとも思う。



オレはぐるりと周回し、

地域振興とは全く関係なさそうな
出店のタコ焼きを頬張り、

太鼓の演奏に心を躍らせながら、

その会場を後にした。



さて、夜勤までもう一眠りしようか。







来年へ続く

誕生日

誕生日を迎えると、

「○○歳おめでとう！」

という祝福の声が聞こえてくる。
これが何よりも嬉しいことであるのは間違いない。



ただ、何となくではあるが、
年齢が先行しがちなケースも多くみられる。

歳を重ねるに連れ、
徐々に祝福されることが・・・
誕生日そのものが・・・
嫌になってしまう方もいるかもしれない。

「おめでとう」と言われることが・・・
嫌になってしまう方もいるかもしれない。



そんな時に言いたい。

誕生日というものは、
あなたが、何歳になったかを祝う日なわけではなく、
あなたが、この世に生を授かったことを祝福する日であると。

だから、歳を重ねて徐々に嫌だなぁと思ったとしても、
かける言葉は、やはり、



「おめでとう」



であるし、
これが何年目であろうと、やはり、



「おめでとう」



と伝えてあげたい。
いつまでも伝えてあげたい。




















「ありがとう」



そんな声がする。
祝福への返事ではなく、
あくまでも、相手への祝福の言葉である。

誕生日を迎えて、



「産まれてきてくれて本当にありがとう」



などと言われるのも、
なかなか素敵なのではないだろうか。





「誕生日おめでとう」

そして、





「誕生日ありがとう」





・・・誰にだろうか。

言葉にできない

フグギ！



ヘブジ！



ヒュヅイ！







…違う。







ブォルキ！



ヤマシタ！



ハリモト！







…そんなものではなかった。







ドラッグストアの風邪薬売り場前にて、
マスクをした中年の女性が
唐突にしたくしゃみ。







ホィ゛ッ！



言葉に出来ない。







ハデュリ゛ィ！



言葉に出来ない。

ちょっと

先日、とあるスポーツ選手が、
憧れのプレーヤーと一緒に試合をしたらしい。
プレー後のインタビューで彼は答える。

「今日はちょっと興奮しました」





どこぞの国でウイルスが発生している。
現地から帰国した人がインタビューに答える。

「今知りましたが、それはちょっと心配ですね」





最近、気になる言葉の一つ。

『ちょっと』

あなたの気持ちはそんなものですか？
それどころじゃない気がするのだが・・・










これはちょっと気になる。

これもまた一つ

思い切って後ろに倒れ込んでみると、
先程とは違う青の世界が広がっていた。
背中に触れる砂のクッションが、
潮風と共に疲れた体に何とも心地よい。

大空を浮遊している雲が、とても気持ち良さそうだ。

空に身を委ねれば、
次第に体が溶け込んでいくのが分かる。
さっきの流れ雲を追うように、空中を散歩出来る。





地球は丸いなぁ。





上を向いたまま360度見渡せば、
青空は円盤に貼り付けたようにまるく映った。



当たり前のことを当たり前のように再認識出来る。
これも幸せの一つなのではないかと思う。