黒豹

夜の国道を。
オレは黒豹に追われていた。

相手から何か仕掛けてくるわけではない。
しかし、オレがどれだけ撒こうとしても
奴からは決して逃れられず、

曲がり角を右に折れ
ホッと一息ついてみたとしても、

気付けばまた、
奴の鋭い眼差しがオレを突き刺すのであった。





静かな静かな夜の町を。
黒豹は、辺り一帯を睨んで構える。
さっきより、少し高い位置に顔が昇っているようだ。

ハッキリと見える奴の片目を
じっ…と見つめ返す。



明日は晴れるに違いない。

平日の朝から

平日の朝からこの賑わい。
その顔ぶれは老若男女を問わない。

ここにいる者たちは、
このあと恥ずかしい写真を撮られ、
それを買い取らなければならなかった。

しかし、誰も帰ろうとはしない。
言われるがまま、素直にブース内へと吸い込まれる。



カシャッ。



カシャッ。



…一人、また一人とカメラマンの餌食となっていった。










面倒臭い。

実に面倒臭い。

せっかくの休日。
免許更新のため、朝から免許センターに出向く。
平日にもかかわらず
センター内は人でいっぱいである。



まぁ、



特に面倒臭いのは、
これが、違反者講習だという１点に尽きるのであるが…

これから２時間。

みっちりとお勉強だ。

ふわりふわりと

まるで、たんぽぽの綿毛のように、

ふわりふわりと大空を舞っているようで。



まるで、作りたてのメレンゲのように、

ふわりふわりと美味しさをアピールしているようで。



ふわり。



ふわり。



ふわりふわり。



ふわり。










このあと6時からの会議。
夜勤明けのオレは昼前辺りから就寝する。

覚醒後、1時間弱・・・
頭の中は、いまだどこかに飛んで行ってしまっているようだ。

ふわりふわりと。

彼は一人、空中を散歩している。

６日朝にかけて

23:00八千代。

00:00蘇我。

01:00長生。

02:00八街。

食事・買い物。

03:30佐倉。

04:00千葉。

04:30浦安。

05:00稲毛。

05:30八千代。





電車トリックのサスペンスドラマよろしく、
千葉県内を絶妙なラップで廻る
一台の車がいた。

大型連休最終日。
特別何もしてこなかったオレは、
やっと『らしい』ことをしてみる。



が…



何故、こんな無茶な感じになってしまったのか。

この謎は、
青ジャケット年齢詐称眼鏡少年にも、
祖父の名前を賭け事に使用する高校生にも、
なかなか解けないに違いない。



自分でもよく分からないのだから。

うらおもて

喜びと悲しみ。

成功と失敗。

信用と裏切り。

希望と絶望。

期待と不安。

生と死。



あらゆるものは何かと隣り合わせにあり、
互いに弥次郎兵衛のように
微妙なバランスを保ちながらオレらに纏わり付く。

そのバランスが崩れると、
感情は支配されコントロール制御もままならなくなる。

今までそう思っていたものが、
何かのきっかけで全く反対の結果を生み出す。

それは一瞬の出来事であり、
結果が良くも悪くも、
その鮮やかさには目を見張る。



まるで、オセロのようだ。

一つのきっかけで、盤上は形勢が大きく変わってしまう。

その一手が、自らを歓喜へと導くものか、
自らの首を絞めるものかは後になれば分かる。
ただ、忘れてはいけないことは、
どちらも自分の意思が降した決断だということだ。



言動には、自らの意思が反映される。
きちんと責任を持たねばならない。
大切に暮らしていこうと改めて心に誓う。

一つのきっかけで、相手を深く傷付けてしまうこともあるのだから。